サブスクリプション音楽配信のある幸せ

合法で定額の有料サブスクリプション配信が常識となった社会は音楽文化にとってたぶん幸せ

今が歴史上いちばん音楽を幅広く効率的に楽しめる時代

SpotifyApple Musicといった月定額で音楽を楽しめるサブスクリプション配信サービスが常態化したおかげで現代は音楽をおそらく最も幅広く効率的に楽しめる時代になった。

レコードやテープ、CDなどの複製技術が生まれ、ラジオやテレビといった電波技術が発達したが、いずれも送り手側の意思やコントロールに左右されるメディアだった。聴き手、消費者としては、買う、ないし録音しておくということが必要であった。

それがインターネット通信技術のおかげで状況がかわってきた。違法ダウンロードから有料のダウンロードへ、そして有料の定額サブスクリプションへと音楽サービスのあり方は進化した。

これは聴き手、消費者にとっては素晴らしい進化である。普通の人は知らない音楽を買ってから聴こうとはしない。少なくとも既知のアーティストの新譜を買う程度で、何かわからないから買ってみよう、なんて物好きは少数派だった。その少数派だった私でさえ買うものには限界があるし買う額にも限界があった。新譜でCDに年100万円使っていたがそれでもたかがしれている。当時音楽好きを自称する人たちは中古屋や輸入店で買い漁るのが普通だったので彼らの消費額はアーティスト側には殆ど還元されなかっただろう。そして業界人はサンプル中心で自腹を切ることはなかった。私のような少数派がほぼ買うのをやめたことでフィジカルなレコード、CDやらヴィニールやらテープやらは売れなくなった。握手会などの特典ビジネスで少数のファンが積むことでフィジカルを支えているのが実情である。

テレビでの音楽番組はほぼなくなった。ラジオは低空飛行のまま生き延びており今はradikoのおかげか若干息を吹き返しているように見える。実際私も何年かぶりに聞く習慣が復活した。とはいえ好きな音楽を聴くための道具としてではない。音楽は主にネット。これまではYouTubeが基本だった。検索すればPVが見られる。しかも無料だ。ただし。違法なものもある。利用する側が気にすることではないが。それは権利を持つ側と侵害する側の問題なので、正直利用者を巻き込まないで解決してほしい。ただGoogleにはそこまでの細やかな神経はない。その点が有料ダウンロードを広めて違法ダウンロードを駆逐したAppleとの違いなのだろう。それはさておき。PVでもショートバージョンのみのものや、アップされていないものもある。そもそもPVが作られていない曲はあがりようがない。少なくとも公式には。そんな中、有料サブスクリプションサービスが出てきたわけである。

サブスクリプションに参加しているアーティストの音源は公式に認められたものである。まぁ中には違うものもあるらしいがレアだと思ってよいし、それは原権利者と侵害者との問題である。有料配信なので客はカネを払って利用する。有料なのでアーティストサイド、権利者側にも分配がある。たぶんにベストの解決法である。権利者の参加数が増えたおかげで、消費者は夢のようなアーカイブを手に入れることができた。過去の歴史上におけるどの時点の音楽ユーザーよりも最も豊かな環境に現代人はいる。音質がどうこうとか特定ジャンルはどうこうという話はあるだろうが、それは全体から見れば些細な話である。

消費者に良い時代だがミュージシャンにとってはどうか?と言われるが、それは考え方次第

なおサブスクリプションのおかげでバンドマンが儲からなくなった云々の話があるが、そんなわけあるまい。真実ではない。元々売れていない人なら変わらないだろうし事態が好転する可能性がある。一方で3,000円のアルバムを1万枚売っていた人ならどうなるか、というとメジャーの場合アーティストサイドに10%入るという計算なら3,000*10,000*10%=3,000,000円である。作詞作曲も演奏も自分でするなら丸々入ってくるがそれでも3百万円。ボーナスとしてなら良いかもしれないが。作詞作曲別でメンバーが5人もいれば、ちょっとした臨時収入でしかない。ちなみに小売卸に30%、残り60%は版権もつレコ社ないし事務所とした場合に計算を続ける。60%が入る版権持ちの会社は、それゆえコストも負担する。その半分がコストとすれば実は30%分しか利益に見込めない。また1万枚といっても印税はプレスから計算するだろうから返品売れ残りもある。小売卸は売れた分で良いとして、アーティストサイドには実売での契約ではないだろう。それならアーティストサイドはトップオフの上で50%の配分を、といった話になるのが普通。で、返品が50%あったとすると… 売上は元々の半分。それを100%とすると、アーティストサイドへの割合は実質20%に。小売卸は実質15%で済むが、コストは実質60%に跳ね上がる。すると手残りは、5%まで下がる。それでも利益5%÷コスト60%なら利益率8%あってまずまずなわけだが。金額を考えたら苦しそうだ。

要するに、コストと返品率の問題が版権持つ側を苦しめていることがわかる。フィジカル、物理的なメディアを販売する複製ビジネスは、複製ゆえに刷れば刷るほど儲かるものだったが、刷れなければ儲けは減る。売れないで返品されることで厳しさを増していく。レコード、CDの問題は、出版と同じで、出荷した先で売りきれずに返品される問題が大きい。欲しいところに回せない旧態依然の卸、売れる量以上に陳列する必要がある店頭。結局、版元直売とアマゾンだけに限定して、注文分をすぐ焼いて送るCD-R方式にしたほうがおそらく利益率は良い。予約注文数量限定はそれで豪華なものにしようとするとロットの問題が発生するので、できるだけシンプルなパッケージにしたほうが良い。それを別売りオプションでカスタマイズなりバージョンアップできる形にするのがベスト。あとは売り切り商売にすべきだろう。ファストファッション界を見習え、って話。古いビジネスモデルのまま進化できていないから苦境に陥るのである。なので、新しい時代のバンドマンは未来がある。メジャー契約などせず、するならパブリシティ担当など役割限定で契約して、フィジカルはライブ会場と通販で売り切りつつ面倒ならアマゾン限定にして歩率交渉、グッズは必須だができれば日常使いできるものが良いのでコラボレーションがおそらく事務所のもっとも重要な仕事、イラストやデザインのできるメンバーが重宝される。PVも同様。結局、旧来のレコード会社や音楽事務所がかかえているスタッフでは対応できないところにこそ勝機があるということですかね。

結論:楽しみ方も儲け方も今が一番幸せな時代

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